2000年10月13日 週刊朝日
精巧「偽バイアグラ」日本上陸 愛知県警が摘発
薬事法違反容疑で愛知県警が今年五月、京都市内の輸入代行業者を家宅捜索した際に押収したバイアグラの錠剤が、精巧な偽造品だったことが明らかになった。日本で「偽バイアグラ」が確認されたのは初めてのことだ。
県警から鑑定を依頼されたバイアグラの製造・販売元、ファイザー製薬では言う。
「分析の結果、有効成分のシルデナフィルの含有量が、正規のものよりも大幅に下回っていました。でも、入れ物も錠剤も、見た目では本物と全く区別がつきません」(同社製品広報室長)
偽造されたのは米国製シルデナフィル百ミリグラム含有の錠剤。日本国内では二十五ミリグラム含有と五十ミリグラム含有の錠剤だけがそれぞれ一錠あたり千百円、千三百円前後で販売されている。購入には医師の処方箋が必要だ。
だが、日本の愛好者は、薬事法で認められた範囲で扱う個人輸入代行業者を通じ、米国から入手するケースが多い。米国で販売している百ミリグラム含有の錠剤は、千三百円前後で入手できる。半分もしくは四等分に割って服用できて割安になるうえ、処方箋もいらないので人気がある。
バイアグラの輸入代行では業界トップクラスの実績を誇る、ある業者はこう言う。
「ほとんどが百ミリグラムを注文されます。注文を受けて発注し、現地スタッフが医薬品の卸問屋から仕入れたものを送ってもらうので、間違いはない。ただ、代行業者にもピンからキリまであります」
「偽バイアグラ」はどこで製造され、どういったルートで日本に上陸したのだろうか。
取材を進めると、輸入代行に頼る日本の需給構造をあてこみ、バイアグラを闇で売買するマーケットがロサンゼルスの日本人街にあることがわかった。サイドビジネスで輸入代行を始めて間もない自動車部品業者は、こう話す。
「ロスで観光中に知り合った日本人ブローカーに誘われて、代行業を小遣い稼ぎに始めた。コネをつけた現地の医師や薬局の人間からブローカーに横流ししてもらう」
さらに、現地のバイアグラ“闇取引”に詳しい関係者は、「実はロスには、一年ほど前から偽バイアグラをつくっている韓国人グループがいる」
と明かした。
「あいつらの偽造品はものすごく精巧。まず本物を四等分か五等分に分け、そのひとつずつに、別の成分を混ぜて本物の一個分につくり直す。韓国市場向けだったけど、今年に入って韓国での取り締まりが強化され、違法な輸入などが摘発された。その結果、余った大量の偽造品が日本に流れてきたんだよ」
同時期に、ロスでバイアグラを横流ししていた医師らが摘発されたため、
「闇マーケットに品物が出回らず、日本人ブローカーに頼っていた業者はあわてた。これが、偽造品が日本に向かう直接のきっかけになったのでは」(同関係者)
偽造品は当のブローカーにも見分けがつきにくいという。
今後も国内で流通する可能性があるため、怪しげなルートからの購入は控えたほうがよさそうだ。
(本誌・藤田知也)
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精巧「偽バイアグラ」日本上陸 愛知県警が摘発
薬事法違反容疑で愛知県警が今年五月、京都市内の輸入代行業者を家宅捜索した際に押収したバイアグラの錠剤が、精巧な偽造品だったことが明らかになった。日本で「偽バイアグラ」が確認されたのは初めてのことだ。
県警から鑑定を依頼されたバイアグラの製造・販売元、ファイザー製薬では言う。
「分析の結果、有効成分のシルデナフィルの含有量が、正規のものよりも大幅に下回っていました。でも、入れ物も錠剤も、見た目では本物と全く区別がつきません」(同社製品広報室長)
偽造されたのは米国製シルデナフィル百ミリグラム含有の錠剤。日本国内では二十五ミリグラム含有と五十ミリグラム含有の錠剤だけがそれぞれ一錠あたり千百円、千三百円前後で販売されている。購入には医師の処方箋が必要だ。
だが、日本の愛好者は、薬事法で認められた範囲で扱う個人輸入代行業者を通じ、米国から入手するケースが多い。米国で販売している百ミリグラム含有の錠剤は、千三百円前後で入手できる。半分もしくは四等分に割って服用できて割安になるうえ、処方箋もいらないので人気がある。
バイアグラの輸入代行では業界トップクラスの実績を誇る、ある業者はこう言う。
「ほとんどが百ミリグラムを注文されます。注文を受けて発注し、現地スタッフが医薬品の卸問屋から仕入れたものを送ってもらうので、間違いはない。ただ、代行業者にもピンからキリまであります」
「偽バイアグラ」はどこで製造され、どういったルートで日本に上陸したのだろうか。
取材を進めると、輸入代行に頼る日本の需給構造をあてこみ、バイアグラを闇で売買するマーケットがロサンゼルスの日本人街にあることがわかった。サイドビジネスで輸入代行を始めて間もない自動車部品業者は、こう話す。
「ロスで観光中に知り合った日本人ブローカーに誘われて、代行業を小遣い稼ぎに始めた。コネをつけた現地の医師や薬局の人間からブローカーに横流ししてもらう」
さらに、現地のバイアグラ“闇取引”に詳しい関係者は、「実はロスには、一年ほど前から偽バイアグラをつくっている韓国人グループがいる」
と明かした。
「あいつらの偽造品はものすごく精巧。まず本物を四等分か五等分に分け、そのひとつずつに、別の成分を混ぜて本物の一個分につくり直す。韓国市場向けだったけど、今年に入って韓国での取り締まりが強化され、違法な輸入などが摘発された。その結果、余った大量の偽造品が日本に流れてきたんだよ」
同時期に、ロスでバイアグラを横流ししていた医師らが摘発されたため、
「闇マーケットに品物が出回らず、日本人ブローカーに頼っていた業者はあわてた。これが、偽造品が日本に向かう直接のきっかけになったのでは」(同関係者)
偽造品は当のブローカーにも見分けがつきにくいという。
今後も国内で流通する可能性があるため、怪しげなルートからの購入は控えたほうがよさそうだ。
(本誌・藤田知也)