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朝日新聞　2002年05月24日 夕刊
中国製「バイアグラ」を無許可で販売、２容疑者逮捕

　勃起（ぼっき）不全治療薬「バイアグラ」の主成分が含まれた医薬品をインターネットで販売していたとして、警視庁は２４日、貿易会社取締役Ａ（３５）＝東京都豊島区東池袋２丁目＝と中国籍の同社社長Ｂ（４４）＝府中市宮町１丁目＝の２容疑者を薬事法違反（無許可販売）の疑いで逮捕したと発表した。１年間で３７都道府県の約１８０人から約２２０万円を売り上げていたという。
　調べでは、２人は医薬品販売の許可がないのに、昨年６月から今年４月まで、世田谷区の会社員男性（３５）ら１０人にクエン酸シルデナフィルを含む「威哥王」計１８０錠を「中国製バイアグラ」などと称して、約３３万円で売った疑い。


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朝日新聞　2001年10月21日 朝刊
８０７万人がぼっ起障害に悩む

　日本人男性のぼっ起障害（ＥＤ）人口は、およそ８０７万人。成人６人に１人の割合になる。こんな推計を慶応大学医学部の丸茂健・助教授らが日本性機能学会で発表した。
　丸茂さんらは、２３歳から７９歳の男性２３１１人に、世界標準になっている「ＩＩＥＦ」（国際ぼっ起機能スコア）という問診票を送り、回答のあった１５１７人（回答率６５．６％）について分析した。
　質問は性生活に関する１５項目。そのなかで「ここ４週間、ぼっ起を維持する自信」についての問いに「低い」と答えた人を中等度のＥＤ、「非常に低い、全くない」と答えた人を高度のＥＤとみなした。両方あわせると、６０代の回答者の約４割、７０代では約６４％が該当した。
　この割合を日本の人口に当てはめると、中等度５０５万９千人、高度３００万９千人になるという。
　４０歳以上の回答者の病気や既往歴とのかかわりを見ると、高血圧や糖尿病、心臓病などが危険因子になっていることも浮かび上がった。
　ＥＤ外来を訪れる人が増え、若い世代も目立つ。「治療薬バイアグラが９９年に日本でも発売された。この薬がなじみやすく、病院に来ることに抵抗感が少なくなったためではないか」と丸茂さんは話している。


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朝日新聞　2001年06月21日　朝刊
薬用植物　マレーシアで新「南北問題」（世界発２００１）

　熱帯雨林が、薬用植物の宝庫として注目を集めている。先進国の製薬会社などが新薬を生み出す原料に使い始めたためだ。先住民の豊富な知識を、難病の特効薬の発見に役立てたい先進国側の期待と裏腹に、途上国側は薬草や先住民の知識をめぐる権利を主張し始めた。新たな南北問題の舞台となりつつあるマレーシアのジャングルに、先住民の案内で入った。
　（チオン村〈マレーシア北部〉＝岡野直）
　
　◆活力生む木の根
　湖畔に竹製の小屋が１６戸並ぶチオン村。マレーシア北部ペラ州で焼き畑農業を営むティミヤ族の村だ。
　村のすぐ裏はジャングル。長老のアロンさん（５９）とともに、狭い獣道へ入る。いきなり、手足をカに食われた。「虫よけの薬だ」と、道ばたのシソの仲間の草を手渡された。だ円形の葉をもんで出た汁を塗ると、カが寄りつかなくなった。
　アロンさんは数十メートルおきに立ち止まり、次々に薬用植物を教えてくれた。根をせんじて下痢止めにする草は現地名でチレ。果実ガラールは利尿作用があるという。高さ約４０メートルの樹木ポコカユは、樹液をほおに塗り歯痛止めにする。歩き始めて１時間ほどで１８種類を見つけた。
　約５時間後、道沿いのくぼ地に細長いトンカタリ（和名・ナガエカサ）の木を見つけた。根が疲労回復に効くという。
　その夜、村人がせんじた紅茶色の液体をコップ１杯飲んだ。朝鮮ニンジンより苦い。疲れているはずなのに眠気がとんだ。翌朝、不思議と手足に筋肉痛を感じなかった。
　
　◆ブーム過熱気味
　マレーシアでは数年前、研究者が「トンカタリが男性ホルモンを増やす」と発表した。「マレーシア版バイアグラ」と評判を呼び、製薬会社５社以上がカプセル薬などを販売。売ることを目的に、トンカタリを空き地に植える市民も現れ、ブームは過熱気味だ。
　同国サラワク州では９年前、米国の研究者がエイズウイルスの増殖を抑える可能性のある物質を樹木から見つけた。マレーシア森林研究所によると、同国の熱帯雨林の樹木の種類は５０ヘクタール当たり約１０００種と日本の森林の１０倍以上だ。未知の薬が眠っている可能性もそれだけ大きい。
　かぎは先住民の知識だ。
　熱帯植物のエキス研究開発会社を経営する二村聡さん（３８）＝クアラルンプール在住＝は数年前、同国などで先住民の聞き取り調査を始めた。日本などの製薬会社に新薬開発用のエキスを販売している。先住民の薬草の使用法のデータをつけ加え、エキスの商品価値を高める考えだ。「新薬開発ではエキスの薬効を探るため多くの実験を重ねる。もともとの使用法が分かれば、効率的に研究できる」と話す。
　
　◆近代化でうせる知識
　途上国側もこうした熱帯雨林の価値に気づき始めた。日本企業などの乱伐で林業が下火の同国サバ州。チョン州首相は「薬草を２１世紀の産業の柱にしたい。日本も新種発見に協力してほしい」と話す。同州南部では薬草を使った製薬工場団地の建設計画が進む。
　州政府は昨年、植物標本などの持ち出しを規制する州法を制定した。他国の機関や企業が採取を希望する場合、サバ州の研究機関などと協力し、新薬開発などで生まれる利益を州と分配するため協議することを義務づけた。製薬会社関係者らが旅行者などを装い植物標本をこっそり持ち出す例が多いためで、連邦政府も同様の法を検討中だ。
　一方で肝心の先住民の知識は生活の近代化で失われつつある。チオン村では、薬草採取をめったにしなくなった。連邦政府が昨年１０月、村のそばに診療所をつくったためだ。医師が無料でマラリアなどの薬を配るようになり、村人は「薬草より効く」と口をそろえる。約３年前にマレー人がイスラム教を布教し、改宗した村人はサル狩りをやめ、吹き矢の矢毒に使う草も採らなくなった。
　昨年５月ケニアで開かれた「生物多様性条約」＝メモ＝の締約国会議で、途上国側は先住民の知識保存などを訴えた。新薬開発などでの利益分配も求めた。
　二村さんは「先住民の生活向上のための基金づくりも提唱されている。でも銀行も知らない彼らが基金を使いこなせるか不安もあり、具体策は難しい」と話している。
　
　■生物多様性条約　薬用植物など生物資源の原産国と利用側の公正な利益分配や先住民の知識保存などをうたう。米国などを除く１８０カ国が批准。日本も批准している。途上国側は先住民の知識について特許制度の適用など制度的な保護を訴え、自由な利用を目指す先進国と対立する。背景には「生物資源も石油のように原産国の所有物」とする考えがある。
　９０年代、中南米諸国やフィリピンなどが生物資源の持ち出し禁止などの保護措置を打ち出した。だが、国外からの研究者訪問の激減など、政府による過度の規制の弊害も出ている模様だ。
　
　【写真説明】
　ガラール　利尿作用がある。黄色く熟した実を食べる
　カンタン　ショウガ科の植物で、茎を消化薬として食べる
　ポコカユ　幹を刀で傷つけると白い樹液が流れる。ほおに塗り歯痛止めに使う
　くぼ地で見つけたトンカタリの木を手でつかむガイド役の男性＝いずれも岡野写す


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2001年06月04日 アエラ
男、３０にして勃たず　ＥＤに映る男と女

　語ることがはばかられていた、このテーマ。
　でも、治療薬が出たりして、タブーではなくなった。
　そこで見えてきた、求めているものの違い。
　
　「女として愛されないなんて娘が不憫すぎる。別れるために、離婚調停に出す診断書を書いて」
　娘夫婦は夫の勃起障害（ＥＤ）のために２年前の結婚当初から性生活がうまくいかず、娘はそのためにずっと辛い思いをしている。このままでは子供もできないので、慰謝料を受け取り、きっぱり離婚してやり直させたい、というのがこの母親の言い分だ。
　
　○外来患者の最多は３０代
　医師は夫を病院に呼び、カウンセリングをしてみた。確かに勃起が不十分のため、セックスができずに悩んでいたが、どうもその裏には、寝床で横たわったままの「完全マグロ状態」の妻への遠慮や、一度失敗したことによる自信喪失が根強くありそうだ。
　「失敗して以来、妻の僕を見る目が変わったことで、ますます自信がなくなっていく。悪循環です。彼女の方から協力の姿勢を見せてくれれば、精神的にも楽だと思うんですが」
　この男性は見合いで妻と結婚する前は、女性との交際もほとんどない「オクテ」タイプ。そのうえ、妻の気持ちに対して過度に気を使ってしまうため、余計、「成就」が難しくなる。
　医師は診断書に「ＥＤの治療には、妻の協力が必要」と書き添えたため、離婚は成立したが、妻への慰謝料は免除された。医師からみると、こういう母親が介入してくるケースでは、妻が夫の好条件につられて結婚したが、愛情はないケースが多いという。
　男女両サイドのＥＤ外来を設けている東邦大病院泌尿器科、永尾光一講師によると、
　「母親が介入したＥＤ診断書依頼は、月に３、４件は必ずある。夫婦の性の悩みをお互いに向き合わず、母親が出てきてしまう時点で、もう関係の復旧は難しい」
　この病院の男性外来を訪れる患者は、月に約１２０人。意外にももっとも多いのが３０代、次が４０代、５０代、６０代と続く。３０、４０代とも原因の８割前後は心因性ストレスによるもの。
　日本全体についての推計では、なんと最大で約９５０万人（９８年、厚生省などの調べ）がこの障害に悩んでいるというから驚きだ。そのうち８割前後が糖尿や高血圧など身体的な病気や加齢によるもの、残りの約１２０万人が精神的な要因によるものという。
　永尾講師にＥＤになりやすい人の特徴を挙げてもらうと、
　「初体験が風俗産業のプロの女性で、しかも見合い結婚という、オクテでナイーブなタイプ」
　という。
　
　○リストラ、転職の不安
　妻にそれなりの愛情はあっても、性的な欲望の対象としてみることが失礼だと考え、抑圧してしまう「お行儀の良すぎる」男性も少なくない。が、妻はそれを「愛情がないため」と考え、関係にすき間風が吹いて、ますます非協力的になるという悪循環なのである。
　仕事のストレスが原因になっているケースも多い。リストラや転職、人間関係の不安で、「セックスどころじゃない」という切羽詰まった心境になっている３０代も、やはり「３０にして、勃たず」。
　「最近はバーチャルな裸像やアニメでのマスターべーションなら興奮するが、生身の女性相手では自信がなく、失敗しやすいというタイプも出てきた。これもＥＤ予備軍です」
　と永尾講師。
　３１歳の会社員、弘さん（仮名）もその１人。学生時代から彼女いない歴が長かったため、アダルトビデオを使ったマスターべーションが完全に習慣化していた。しかも手を使うのではなく、布団の摩擦を利用する「変形型」。そのやり方も強さや角度など「絶対これ」というツボがある。彼は１０代から性について友人との情報交換もしたことがなく、しかも母親が厳格だったため、「勃起させることは、いけない、恥ずかしいこと」と刷り込まれており、いわゆる「半立ち」といわれる状態で射精させていた。
　その弘さんが見合いで結婚したから、夫婦生活は最初からお先真っ暗だった。
　「マスターべーションじゃないと、全然いけない。それにそもそも、最初から成立するのが数十回に１回。妻は態度がひどく冷淡になってほとんど口もきかず、今、離婚調停に入っている」
　
　○「妻は子育て」と「免責」の夫
　勃起障害治療薬バイアグラを製造するファイザー製薬では昨年、俳優の佐野史郎夫婦をキャラクターに起用して、大々的にＥＤキャンペーンを行った。ＥＤが治療可能な病気で「治療は恥ずかしいことじゃない」という認知を一般に広めようという趣旨だ。
　バイアグラについては人気の過熱ぶりも手伝って、「認可初年度の９９年は、８カ月間の医療機関への納入量が４６０万錠。２０００年１年間の６００万錠と合わせて１０００万錠を超えている」（同社医療広報・原田憲成さん）
　ＥＤ患者の中で、利用者は４０万人程度という。現在は病院の外来でも、勃起能力が残っているかどうかのテストはせず、とりあえずバイアグラを服用させ、効かない２、３割に身体的な治療をするというやり方が増えつつある。
　同社が作った別表のＥＤチェックをもとに、一応、心身とも健康と自任する男性の２０代、３０代、４０代に、５、６人ずつ「自己査定」してもらった。その結果、２０代も３０代も「自分がＥＤとは思わないが、能力に自信があるかと聞かれると、あまりない」との答えが多かった。３６歳の会社員は、
　「妻に対しては、（１）から（４）まですべてＮＯだが、外の相手なら、すべてＹＥＳ」
　とフラチな答え。この会社員は、「仕事が忙しい」「疲れた」「妻は子育てで忙しく疲れている」などを、「免責事項」としてあげる。この場合は、ＥＤというより「セックスレス」に近い。
　
　○世代、性別で違う「強さ」
　バイアグラの服用はあくまで性的刺激があることが前提で、それに対して通常の勃起能力を促進する薬なので、妻にまったく性的興奮を感じられない（！）場合は役にたたないわけだ。
　また「自分はＥＤかも」という彼女いない歴２３年の男性は、
　「自分は性欲そのものが薄いから、別に成立しなくても困らない。女の子が部屋にきても、友達ののりでしゃべって何もなく終わる。バイアグラを飲んでまで、自分を変えたいとは思わない」
　そもそも強い性的能力は男に不可欠という考え方も、世代が変わればかなり変化する。４０代ではまだ根強いセックスヘの関心度や強さについての同調圧力も、今の学生たちの間ではほとんどないという。だからパートナーの不満さえなければ、ＥＤでも性欲が希薄でも、一向に構わないわけだ。
　ともかくセックスを成立させれば夫婦関係はうまくいく、という観点から見れば、確かにバイアグラは悩める男の救世主かもしれない。が、東邦大病院や博愛会記念総合病院の調査で、バイアグラ服用患者の治療への満足度が１００％に対し、パートナー側は満足度が７０％、どちらでもない１５％、やや不満は６％。継続希望は患者１００％に対し、パートナーは６７・５％だ。気になるのはこの差。１つはパートナー側が性交痛や性欲減少など性機能障害があるのに、夫側だけ欲求が強くなることへの不満、２つ目は副作用の心配だという。
　「これからの課題は女性。妻にも障害のある場合は夫婦で同時に治療することが必要ですから。とにかく治療を受ける前に、まずお互いの希望を話し合うことです」
　と永尾講師はいう。ＥＤだから夫婦仲がこじれるのか、こじれているからＥＤになるのか。とにかく、悪循環を断ち切るきっかけは男性が自信をつけること……らしい。でも女心はビミョー。夫にＥＤ疑惑を持つある主婦は、苦笑しながらこう話す。
　「やみくもに強ければいいってわけじゃない。自分も女としてまだまだイケてるっていう、性的な魅力を再確認したいんであって、毎回バイアグラがないと成立しないっていうのは、何だかなーっていう感じですね」
　（ジャーナリスト・速水由紀子）
　
　＜ＥＤチェック＞
　（１）常に勃起を達成し、維持させる事に自信がありますか？
　（２）勃起した際は、常に挿入するのに十分な硬さになりますか？
　（３）性交あるいは性的行為が終わるまで、常に勃起を維持することができますか？
　（４）勃起を達成し、維持させる能力について満足していますか？
　　　　　＊
　以上の質問のうち、「いいえ」があれば、医師にＥＤについて相談してみましょう。


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No. 発行日 朝夕刊 面名 ページ 文字数
00387 2005年11月28日 週刊 アエラ 078 03848文字


外国人妻から見た、ここがヘンだよ！日本人夫

　外国人からみると、日本の男性は不思議に映るらしい。
　だが、不満の理由は、日本人妻が抱えていることと変わりはない。

　まるで映画のヒロインになったような気分だった。
　米国人の山本ミシェルさん（３８）がインターネットのチャットで１１歳年上の日本人男性と知り合ったのは７年前。英語はたどたどしかったが、毎日オンラインで話しかけてくる。
　ある日、彼がうどんや和菓子と一緒に、「ぼくの住んでいるところだよ」と自宅や海岸、街の中で撮った５０枚もの写真を郵送してくれた。自宅の和室には服が無造作に散らばっていて、新聞紙も積み上げられたまま。飾り気がなくてかわいい人だな、と思った。
　半年後、彼が米国に遊びに来て、初めて会ったときのことだ。
　「結婚してくれますか」
　手には、ミシェルさんの日本行きの航空券が握られていた。
　男性におくてだったミシェルさんだが、穏やかで誠実そうな彼の前では、自分を出すことができた。その足で教会に行って挙式。夫の家がある北陸地方の小さな都市に移り住んで、６年になる。
　
　●セックス回数が激減
　米国に来たときは人前で堂々と手をつなぎ、優しくキスもしてくれた夫。だが、帰国した途端、ミシェルさんは夫の態度が急変してしまったように感じた。
　夫の職場近くまで送り、さよならのキスをしようとしたら、「人に見られるから」と頑なに拒否。車で一緒にレストランに出かけても、到着すると１人でさっさと店内に入る。仕事から帰宅後、「今日はどんな一日だった、ハニー？」と聞いても、「いい日だったよ」だけで、黙ってテレビを見る。
　さらに不可解だったのは、結婚直後は毎日あったセックスが、しばらくすると１０日に１回、２週間に１回と減ったことだった。理由を聞いても、無表情のまま「疲れているから」と言うだけ。
　〈私に魅力を感じなくなってしまったのかしら。もしかして、結婚を後悔しているのかも……〉
　心配で眠れず、何度も理由を尋ねた。すると、夫はようやく、本当はもっとしたいが、体が言うことをきかない、と打ち明けた。仕事が忙しく、不眠症だから、常に疲れているせいかもしれない、と。実際、残業時間は月７０時間を超え、休みも月２日しかない。
　「せめて週に１回はしたいわ。バイアグラを試しましょうよ」
　ミシェルさんが提案してからは、２人とも性生活に満足している、と言う。
　「夫婦は何でも話し合うのが当然だと思っていたから、夫がなかなか自分の気持ちや考えを言葉で表現したがらないことに驚きました。政治や宗教から夫婦の問題まで、ちゃんと話し合えるようになるまで丸２年かかったわ」
　国際結婚が年々増えているが、特に夫が日本人で妻が外国人の組み合わせは、約３０年前の１０倍近くの３万９０７件に急増（２００４年、人口動態統計）。国際結婚全体の８割近くを占めている。
　日本人男性と結婚した外国人女性が日本社会に順応できるように助け合うための「日本人の外国人妻の会（ＡＦＷＪ）」（バーバラ・クーン会長）には現在、５２カ国５００人以上の会員がいる。発足した３６年前、夫の職業は大学教員が多かったが、最近は寿司職人から僧侶、医者、会社員まで様々。居住地も全国に散らばっている。
　
　●平日はシングルマザー
　アエラがＡＦＷＪの会員などに、日本人夫についてのアンケートをしたところ、「いい点」として、
　「誠実で、責任感が強い。『私が年をとって、あなたを満足させられなくなったらどうしよう？』と夫に尋ねたら、『大丈夫だよ、君はいつまでも１０代のようだから』と言ってくれた」（埼玉県・フィリピン人・４３歳・結婚７年）
　など「誠実」「穏やか」「仕事熱心」が挙がった。一方、「不思議な点」としては、
　「海外にいるときはいちゃいちゃするのに、日本ではしてくれないので、愛されていないのかと感じてしまう」（愛知県・オーストラリア人・３０歳・結婚５年）
　「言葉が足りない。いつ、どこで、だれが、どうして、すべてを教えてほしい」（石川県・米国人・４５歳・結婚１５年）
　などが代表的な意見だった。
　結婚１４年のニュージーランド人のフリーライター（３６）は、４０代の夫の勤務時間の長さに最初は戸惑った。自分の母は専業主婦だったが、父は毎日５時に帰宅し、皿洗いをし、子どもを風呂に入れ、毎晩寝かしつけてくれたからだ。
　外資系企業に勤める夫は帰宅時間が遅く、出張も多い。仕事をしながら１人で３人の子どもたちに食事を食べさせ、お風呂に入れ、宿題を見なければいけない。
　「平日はまるでシングルマザーのようですが、もう慣れたし、おかげで強くもなった。どこの国の人と結婚しても、『うちのだんなったらね……』と何かしらある。文化の違いより、男女の違いの方が大きいと思うようになりました」
　
　●「英語禁止令」まで
　５０代の夫がいる米国人女性は、約３０年前に結婚したとき、夫のまじめさと亭主関白っぽい男らしさにひかれた。
　だが、仕事が忙しく、ほとんど夕食を家で食べないのに、たまに早く帰って来て、食事を用意していないと、怒られる。自分も英会話学校で教えていたので、週末に１週間分の料理をして冷凍していたら、「料理は１日単位でひらめきで作るべきだ」と文句を言う。
　さらに、姑と同居を始めてから、事態は悪化した。姑に、
　「息子と結婚できて、幸せに思わないといけないよ。こんないい生活ができるんだから」
　など嫌みを言われても、夫は味方になってくれたことはない。それどころか、英語を理解できない姑に気を使って家庭内で「英語禁止令」を出したのだ。まだ１歳と４歳だった子どもたちにも英語で話しかけられなくなってしまった。
　離婚も考えたが、外国人だと親権を取れないと、我慢してきた。最近、下の子どもの専門学校卒業を控えて家を出た。同世代の日本人妻たちが夫に三行半を突きつける気持ちがわかる、という。
　家事をしない、妻に対する愛情表現に乏しい、などは多くの日本人妻も夫に対して感じていることだ。ただ、外国人妻は不満をため込んだままにはしていない。
　台湾系米国人の英語教師（２５）は、来年結婚予定の３０代半ばの彼がもっとロマンチックになるよう、ただいま「調教中」だ。
　以前、韓国旅行で１週間「も」留守にすると伝えたら、「たった１週間でしょ」と言われたので、
　「正しい答えは『えー？　そんなに長く会えないのー？』でしょ」
　と、たしなめた。教え子のことをきれいだねと言われたときは、
　「ほかの女性じゃなくて、私のことをきれいだと言って」
　効果あってか、最近は電子メールの書き出しに「Ｄｅａｒｅｓｔ（最愛の君へ）」「Ｓｗｅｅｔｉｅ　Ｐｉｅ（ねえ君）」とまで書いてくれるようになった。
　それでも気がかりは、一部の日本人男性が女性は若い方がいいと思っているように感じられることだ。ジョギングの途中、奥さんと一緒に歩いている男性が、自分をじろじろ見ることがある。アメリカだったら妻は夫を思い切りひっぱたいているだろうな、と思う。
　彼から、上司に連れられてキャバクラに行ったなどという話を聞くと、心配にもなる。
　２歳年上の夫がいるイギリス人の前田ジュリアさん（３４）も、夫は結婚後の７年間で見違えるように変わった、と言う。出会った当時、一人暮らしだった夫は鍋を持っていなく、一度も家で料理をしたことがなかった。シャツにアイロンをかけたことも、ボタンをつけたこともなし。
　
　●パートナーになりたい
　「私はあなたのお母さんじゃなくて、パートナーになりたいの。私も仕事をするから、あなたもちゃんと家事と子育てをしてね」
　と釘を刺した。今では、母親に電話でレシピを聞きながら和食を作ってくれたり、２人の子どものおむつ換えをしたりしてくれる。
　昨年初めて、夫が２週間の夏休みを取ることに同意し、家族でバリ島に旅行に行った。夫にしてみればすごく勇気のいることだっただろう、と感謝している。
　夫たちの言い分はどうだろうか。
　３年前に５歳年下の中国人女性と結婚した滝谷友厚さん（３２）は、妻が夕食の支度をする間、テレビを見ていたら、座ってないで手伝って、と言われた。
　「片方だけが家事をするなんて、不自然じゃない？　一緒にやった方が楽しいし、時間も節約できるでしょ？」
　確かに……。専業主婦の母が家事をすべて担当するのを見て育ったので、男が家事をするという発想があまりなかった。日本人女性ではなく、外国人である妻に言われたから素直に納得できたのかもしれない、と思う。
　最近は、食事の準備もすれば、皿洗いやトイレ掃除もする。妻が何か自分にしてくれるたびに、「いい奥さんだね。ありがとう」と言うようにしている。
　「日本人男性は言わなくてもわかると思ってしまいがちだけど、それでは通用しないとわかりました」
　（編集部　杉山麻里子）
　
　■夫が日本人の場合の妻の国籍
　総数　　　　３０９０７人
　中国　　　　１１９１５
　フィリピン　　８３９７
　韓国・朝鮮　　５７３０
　タイ　　　　　１６４０
　ブラジル　　　　２５６
　米国　　　　　　１７９
　ペルー　　　　　１３７
　英国　　　　　　　６４
　その他
　（０４年人口動態統計から）


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